本屋で見つけて購入。薄いしハンディなので勝手がよい。通勤・通学のお伴にちょうどよい感じ。
量子テレポーテーションとか量子コンピュータとか、「量子」という言葉が時々耳に入るようになってきたので、いろいろ本を眺めてきたけれど、この本はなかなかオリジナリティが高いような気がする。後半のふたつの話はこの本で初めて知った。
内容は目次と各章のタイトルのとおりで、最初にこの本を読むうえで必要になる量子力学のエッセンスを数式を使わずに説明して、全ての発端になるEPRパラドックスを2章で解説。3章では、EPRパラドックスへの回答として、ベルの定理を対話調で説明している。ベルの定理の最近の進展として、4章でコッヘン-スペッカーの定理を、5章で自由意志定理をとりあげている。ベルの定理は「量子力学は非局所だ」ということ、コッヘン-スペッカーの定理は「量子力学における実在性は状況に依存する」ということ、自由意志定理は「量子力学での暗黙の仮定である、測定の仕方を自由に選べることを認めてしまうと、素粒子も自分の行動を自由に選んでいることになる」ということらしい。
面白いのは、ベルの定理以降の「各論」部分が全部大体同じ設定で説明されていること。町工場のおっさんが作った機械の動きを説明しようとしてもどうも上手くいかない。この機械は量子力学にもとづいて動く機械で、正しく動いてるのは疑いようがない。だからこちらの説明がおかしくて、何故おかしいのかを煎じつめると非局所性とかが出てくるという仕掛け。だからといって最初の説明が不自然だったり非常識だった訳じゃない。だから量子力学は常識に反する。これが基本的な流れ。
数式を使ってないし、町工場のおっさんが作った機械しかでてこないっていう意味ではすごく単純。けど、機械の動きの説明の仕方とその破綻の仕方が全部違うから、その違いをちゃんと分ろうとすると読みとばせなくなる。この点が多分この本の特徴で、ある意味論理トレーニングみたいな側面があっておもしろい。
絵や図がたくさん入ってたり、対話調にしたり、いろいろうんちくを挿入したりと、なかなか工夫している。
一見科学っぽくない話題を科学の人達が、科学なりのやりかたで取り組んでいるってことを知れただけでも面白かった。