著者の立ち位置を、「多世界解釈に偏向している」と批判するのは筋違いだろう。
あらゆる理論から等距離の「公平」な解釈などありえない。
むしろ他の理論(ここでは当然ながらコペンハーゲン解釈)の欠点、問題点を乗り越えるひとつの方法として多世界解釈が登場しているわけで、ここに至るのは必然的な結果というべきだろう。
私自身、観測される量子と観測する機器・人間とを別々の世界に置くコペンハーゲン解釈の恣意性を、きわめて奇妙な、不可解なものとして受け止めてきた。それに対する唯一まともな説明が、やっと多世界解釈によって得られたという満足感がある(もちろん100%納得できているわけではないが)。
類書にみる、量子論の理解困難さを本質から外れた俗な比喩によって説明するような間違った方法を、この本は一切採っていない。徹底的に本質に向き合い、それを数式を使わないで噛み砕くという困難な作業をやりとげている。
入門書として最適の本ではないかと思う。