情報の世界はヴァーチュアル、物理の世界はリアルというのが常識なのだが、その二つが実は絡み合っていることを豊富な例と分かりやすい文章で解説した本だ。
実は私も若い頃にそれで悩んだことがある。本書でも初めの方に解説してある、統計熱力学のボルツマンによるエントロピーの定義を習った時である。「エントロピーとは同じ状態を与える微視的な場合の数の対数である」というのが、その定義なのだが、「同じ状態」とは何ぞやが主観的に感じたのだ。それは「同じ状態」とくくる時に失われた情報の対数と思えば、情報量としてのエントロピーとの関係が転がり出して来る。一方、「知らないこと」から「知っていること」への転換が情報であると考えれば、そもそも、主観と関係なしには情報を定義することは出来ない。
かように、物理学の基本法則に情報量の概念が絡んでいるし、情報は担体としての物理から逃れられない。これが、量子力学となると、「シュレディンガーの猫」も物理から出てくる情報の解釈は微妙になる一方、ビットの「0か1」ではないキュビットという概念が量子力学の影響で提唱される等、双方の影響は面白い。
この辺は考えれば考えるほど主観と客観の境目が曖昧になってきて、哲学的な議論もある。良く出来たインターディシプリナリーな書物が面白いという典型の本だ。お薦め。