松田優作には大きく分けると3つの顔があった。「蘇る金狼」に代表されるような熱いアクション・(アンチ)ヒーロー、「それから」などの文芸ものに代表されるクールな高等遊民、そしてTV「探偵物語」に代表されるユーモラスな面。多くの作品はこれら3つの要素がブレンドされているのだが、本作はクールな高等遊民ぶりと野獣のような狂気の危ういバランスの上にきわどく成り立っている映画だ。前半、伊達(松田優作)はひたすらクールで、視線を宙に漂わせる能面のような表情でクラシック音楽を高価なオーディオ装置で楽しみながら、着々と銀行襲撃を計画する。暴力的な面はむしろ相棒役の鹿賀丈史が担い、伊達はその相棒の獣性のレベルを上げる役割。伊達に思いを寄せる外資系の秘書(小林麻美)をあっさり撃った後、逃走するが、室田日出男演じる刑事と列車内で対峙する場面から後は、かみそりのような狂気を爆発させる圧倒的な一人芝居の連続。映画全体が破綻してしまうのではと心配するほど、人はどこまで野獣になれるのか、神を超えられるのか、をとことん追求する。彼の主演映画では最も危ない魅力に満ちているのが本作だ。
BDとしての画質だが、私はDVDデジタル・リマスター版を知らないのでそれとの比較はできないが、80年の映画のBDとしてはまあまあの出来。
しかし、本作ではクラシック音楽と銃の音が重要な役割を占めるから、モノラル リニアPCMはないでしょう。所々音が歪み、聴き取り難い台詞もある。
時計じかけのオレンジも最初の頃のDVDはモノラルだが、最新のBDでは5.1ch DTS−Master Audioになった。本作も音質を向上させてほしい。