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緻密な描写は、今まで飢餓というものに無縁だった身にも、ほとんどそれを体感させる。安易な感傷を峻拒する内容は研ぎ澄まされた文体と完全に一致している。必然的に「私」の行為も「私」によって容赦なく分析されていく。
深遠な思想を浅薄な読み方で汚(けが)すべきでないと思うと、身が引き締まり、意識的に速度を落とした。
泣けばストレスが緩和されると聞くが、涙で洗い流すことなく、歯を食いしばって読んで頂きたい。
大江健三郎の初期作品ともまた違う、戦争の悲惨さや、人間の生の極限が巧みな、それでいて実直な筆で描かれ、読み終えて、現代の小説家が決して捉えることのできない生の証・執着がそこにあった。
まちがいなく、この「野火」は未来永劫受け継がれていかなければならない日本の名著だと感じた。
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