90年代にヤクルトスワローズが大躍進を遂げた。放任主義で
あった関根監督から、身体だけではなく頭脳を使いデータを
重視する「ID野球」を揚げた、野村監督が就任した2年目以降
のことだ。捕手・古田敦也、遊撃手・池山隆寛、中堅手・飯田
哲也の潜在能力を見出し、素晴らしいプロ野球選手を育てた。
ヤクルト時代に、著者・橋上秀樹氏は、監督と選手という関係
であった。ヤクルトの選手時代の13人の同僚・後輩を紹介して
いる。目にとまる選手がいる。88年のドラフト3位で指名を受け
ヤクルトに入団した苫篠賢治だ。持てる才能を開花させ、新人
王を獲得した。関根監督の就任の最後の年であった。
翌年に苫篠には、試練が待受けていた。野村監督の就任ととも
に・・・。
淡々とした文章ではあるが、選手同士でしか理解し得ない言葉
がていねいに綴られている。著者・橋上秀樹氏は、野村監督を
心から、尊敬しているのだ。
野球選手にしか目指せない理想や夢と、突付けられる現実との
ギャップに苦しむ姿は、一般のサラリーマンとは違うのだ。
野球人であるからこそ、一人の監督を通して、成功を掴んだ選手
や挫折した選手を描けたのだ。充実の一冊である。