「何とか言葉を獲得しなければならない」。
この本では、「言葉」がテーマになっている。要所要所で、実際にどのような言葉によって著者が選手を変えてきたかという例が多く出てくる。また、言葉をうまく操るために、著者自身が読書などを通じていろいろ勉強してきたのだということも披露している。
特に深い思い入れのあるという、江本、江夏、門田の3人をはじめとして、つきっきりで育てた古田、捕手からコンバートした飯田、才能があるのに三振が多かった池山と広沢、エースの自覚を促した岩隈、キャンプで投手をやらせてみた新庄、ダーツが上手いのにコントロールが悪い井川、配給を読むことを教えて再生した山崎など、ひとりひとりのエピソードを面白く読んだ。また、日本シリーズでのイチロー対策、あるいは自身が恩師や鶴岡監督や妻に励まされたことなども紹介してある。ただ、既に著者の今までの本で紹介されている例も多くある。
本書を読んで、本業である捕手や監督としての実力やキャリアや努力、さらにそれらに裏打ちされた鋭い観察力があるからこそ、適時繰り出されるボヤキが効果を発揮し、選手やマスコミもそれを重く受け止めるようになってきたのだな、という印象を強く持った。若いころに飲みに歩いて伸び悩んでいる選手の家に行って待ち受けて説教したというのも、単なる言葉というようなレベルのことではない。
「そう、結局は愛情なのである」。