角川で映画化され、当時大ブームとなった文字通り森村誠一氏の代表作の一つと言えるだろう。どちらかというと人間の証明の方が評価は高いが、個人的には森村氏の最高傑作は本作だと思っている。東北の寒村の大量殺人事件の発端から複数の視点の物語がラスト見事に収束する展開は森村氏の絶妙のストーリーテリングのなせる技と言えよう。最初の寒村の描写が初期短編の公害殺人事件の山村の出だしとほぼ同じなど、氏が初期に発表してきた本格推理ものの集大成的な位置づけにあるとともに、初期のアリバイや密室の不可能トリックへの興味は後退し、代わりに強烈な人間ドラマとスケール感のある設定が読み出すと一気にラストまで読み勧めずにはおれない魅力を放っている。主人公を映画では高倉健が演じていたが、まさに高倉健のために書かれたような役柄である。大量殺戮の原因や主人公達のその後の姿がラストのほぼ5行ほどですべて語られてしまうが、このあっけなさがより物語のやり切れなさを強調して読後強烈な印象を残す。森村氏の小説家としての力量が全て出し尽くされたまさに作家としての証明作品となっている。