まず荒削りな勢いある文体から若者世代の雰囲気を感じさせてくれて、一見軽いノリに、くすりと笑わせてもらいました。でも、やっぱり手放しで笑えるような内容ではありません。
主人公の人格はちょっと大げさかなと思いましたが、きっとデフォルメしているのでしょう。野ブタの素朴な人柄と対照的で、さらに際立って強烈に迫ってきました。
主人公のような「虚と実の間で揺れ動きながら仮面をかぶる生き方」は誰にでも思い当たる節があたるだけにチクチクきます。
そして、騙しおおせていると思っていた主人公も、実はクラスメートたちに調子を合わせてもらっていただけで騙されていたのかも知れません。
クラスメートの誰も、主人公を信じてくれていなかった。
結局の所お互い騙し騙され、役割分担の上で成り立つ薄っぺらでありながらも複雑な人間関係。
高校生のみならず社会に出るほどこういった面が多くありませんか?
心の底では愛情を渇望するのに、そんな自分をしっかりと受け止めきれない主人公はもしかして現代人の代表みたいなものじゃないでしょうか?
自分らしく生きるというのはどうしてこんなに難しいのでしょうねぇ。
ラストはファンタジー色がいっさいなくリアルすぎて、救いがあるのかないのか・・・。
この本、読みやすさとノリで騙されてしまいそうですが、とても切なく悲しいお話だと思いました。