全篇を通じて人の善意の美しさと思いやりの尊さを描いた秀作。私自身この映画を少年時代に観ることができたのは幸福だったと思う。現実の社会がそれほど善意に満ちたものでないことに気付いた後でさえあの時の感動は忘れることが無かったし、少なくとも単純な私は彼らのように生きたいと子供心に思ったものだ。そして今はこの作品がパソコン・ゲームに熱中する多くの子供たちに観られることを望んでいる。果たして現在、これだけ純粋に善意をテーマにしたファミリー向けの作品がどれだけあるだろうか。
随所にちりばめられたウィーン少年合唱団のコーラスも、映し出されたティロルの清々しい高原の風景や、彼らが寄宿生活をしている豪奢なアウガーテン宮殿などを通じてすこぶる爽やかな印象を残してくれる。日本では当初から『野ばら』の題名で知られていたが、オリジナルのドイツ語タイトルでは、主人公の孤児トーニの台詞から取られた『僕の人生最良の日』となっている。
主役を演じた当時12歳だったミヒャエル・アンデは現在でも母国ドイツで現役俳優として活躍しているようだ。尚このDVDは過去に出たもののリイシュー廉価盤で1957年制作だが画質に破綻も無く良好。日本語の字幕スーパーに関しては、いくらかやっつけ仕事的ではあるけれど作品を損ねるものではない。同じ出演者による『ほがらかに鐘は鳴る』も今回再リリースされた。