前著『カムイブロートの食卓』から、この著者のファンです。移住した北海道で天然酵母パン屋「ベッカライ麦々堂」をはじめ、そこに至る経緯やパン屋開店とともにはじまったドタバタ暮らしを書いた『カムイブロート〜』は、当時、都会で仕事三昧で、“暮らし”に飢えていた私には涙が出そうに魅力的な世界でした。その後、ときどきパンを注文したりして、次の本を心待ちにしていました。
2冊めの『野のごちそう帖』は、北国の四季をとらえるみずみずしい視線と、茶目っ気のある文体に、いっそうしっとりと深みが加わって、『カムイブロート〜』とはまた違った味わいがあります。静謐な世界から、畑や蜜蜂飼いをともに楽しむ仲間とのくいしんぼう世界をいったりきたり。
たとえば、夏の朝の描写。
「早朝、林の中を、エゾリスが駆け抜けてゆく。蜘蛛の巣に朝露がついて、きらきらとビーズのように輝き、カワセミが池の上をメタリックグリーンの残像を残して横切ってゆく。早朝は魔法の時間だ。」
こんな一文を読むと、ほんとうに私の心にも羽が生えるような気がします。
いつか、こんなに自然に、いのちの四季とむきあう、そんな暮らしをしてみたい。