原作に思い入れがあるため、かなり主観の強いレビューになることを先に書いておく。
この作品は最強の家族の物語だ。伊坂幸太郎は強い倫理観を持ちつつ、犯罪に対して独自の感覚で物語を紡いでいるため、「法は絶対」が当たり前と思っている人にとっては、やや受け入れがたい部分もあるだろう。
だが、「楽しそうに生きていれば地球の重力なんて越えられるんだよ」と劇中で語られる通り、この物語はそういうレベルの現実感とはかけ離れたところで語られている。この話は、重力を感じさせないピエロのような物語であるべきなのだ。だったら、この映画は、これでいい。
伊坂幸太郎の作品自体がそもそも現実からは少し離れたような独特のルールで進むため、ご都合主義だったり、非現実的立ったり感じる部分もあるかもしれない。が、ひとつひとつのシーンを丁寧に描き、複雑な原作に惑わされずに、テーマを描き切り映画化したことを大いに評価したい。音楽と美しい映像、キャストの佇まい、しっかり映画になっている。
原作の省略の仕方や、改変の仕方は、私は良いと思う。特にクライマックスは、原作は非常に映像的なようで実は文章的なシーンだと思うので、あの場所に収束させていくのはもうひとつの正解だろう。
ただ単に文章をなぞった映像を羅列しただけではない、強度を感じさせる映画だ。