倉橋由美子氏は 1995年以来サントリークォータリー誌上に 酔郷譚 の名で短編集を書き続けた.15篇纏まった所で,'よもつひらさか往還' のタイトルで単行本として刊行された(3/2002, 講談社).酔郷譚の方は,依然として連載が継続され,彼女の死の前年 2004年9月刊行の第22篇 '玉中交歓' で途絶えた.この本は,これまで本として出版されることのなかった酔郷譚第16-22の七編を収めたものである.作品の質は勿論変らない.ただ,緑陰酔生夢 や 落陽原に登る のような壮大な話が消え,新しいヒロイン真希さんを加えてより内輪な話が増えた.どうしようもなく色好みの美少年 慧君が主人公なのは言うまでもない.内輪な話と言っても 黒い雨の夜 (9/2003)や最後の作 玉中交歓 のような物凄い話がある.問題は二冊に分れてしまった原酔郷譚をどう頭の中に復元するか,である.とりあえず私は講談社版とこの本を重ねて置き,随時参照している.著者最晩年の性と死への絶え間ない問いかけに圧倒される思いがする.