主人公が家族の元に戻る為、アルコール依存症を克服しようとする姿がリアルに時にはコミカルに描かれていました。
アルコール依存症の描写は、驚きの連続。毎日朝から晩まで酒を飲み続け、身体はボロボロ。突然意識を失ったり、何度も吐血したり、幻覚が見えたり...。
漫画家である妻に対する暴言と暴力。壮絶な症状の数々に唖然とするばかりでした。
院長と由紀の会話でアルコール依存症という病について話があります。「他の病気と決定的に違うのは、誰もほんとうには同情してくれない。場合によっては医者さえも」その言葉は、胸に深く突き刺さります。
また、戦場カメラマンである安行の心中を慮る由紀に「地獄を見た人と、その地獄の中で生きている人とどっちが苦しいでしょうか?」との言葉も投げかける。
当人は、あの世行きにリーチがかかっている状況でなお、「今日こそカレーが食べられるか」と昼ごはんに執着する。それがまたリアル。浅野忠信のどこかひょうひょうとした演技のおかげで、主人公の心が回復して行くプロセスが穏やかな時の流れに思えるのがいい。また、アルコール依存症を克服して退院する前に体験談をスピーチするシーンでの浅野忠信の表情、セリフ回しが素晴らしい。
そして、黙々と仕事をしながら、母として妻として安行を支える由紀を演じる永作博美が素晴らしい。このクールな、というかさっぱりな、というかサバサバした感じのこの作品の空気感を創りだした一番の功労者でした。それだけに終盤のキッチンの玉葱を切りながら号泣するシーンには、思わずもらい泣きさせられました。彼女の強さと弱さの演技がいく層にも重なって、作品を味わい深いものにしているのは間違いないです。
ラストの浜辺のシーンが、哀しいのに安らぎを感じさせ、余韻として残ります。バックに流れる忌野清志郎のうたも心にしみる...。