姫路市立美術館、千葉市美術館、細見美術館と巡回する『酒井抱一と江戸琳派の全貌』の図録です。
376ページの作品図版338点がすべてカラーですし、資料編として130ページ弱の作品紹介や解説が加えられています。紙質もしっかりしており、収録作品とあわせてコストパフォーマンスの高い美術書でした。美術展の図録はお買い得ですが、本書は特にそうですね。なにしろ、これだけ酒井抱一(1761〜1828)とそのお弟子筋にあたる鈴木其一ほかの江戸琳派と呼ばれる絵師の作品が収録されているわけですから。
なお編者と解説は、千葉市美術館の松尾知子氏と細見美術館の岡野智子氏です。なお、細見美術館は好きで年に数回訪れますが、コレクションの質の高さにひかれています。
酒井抱一は良く知られているように譜代大名の家柄に生まれながら、30代で城を離れ出家し、いわゆる隠遁生活を送りながら好きな絵画と俳句の世界に身を投じました。その生きかたは現代人にとっても羨ましい一面を感じさせるものです。琳派の絵画展では必ずその作品が展示されるという江戸琳派の後期を代表する酒井抱一の作品をこれだけ多く鑑賞できる図録も少ないでしょう。
美術展は実際に作品と対峙できる機会なのですが、人気の展覧会ですと観賞者が多く、じっくりと細部まで観賞し辛いわけですが、図録ですと自宅で心おきなく眺めることができますし、展覧会の余韻にも浸れますので、ありがたい存在です。
詳しい解説を読むと、酒井抱一の人生だけでなく、江戸琳派の流れが頭の中で整理されていくようでした。
本書の章立てです。姫路酒井家と抱一、浮世絵制作と狂歌、光琳画風への傾倒、江戸文化の中の抱一、雨華庵抱一の仏画制作、江戸琳派の確立、工芸意匠の展開、鈴木其一とその周辺、江戸琳派の水脈