江戸中期の商工経営者の道と心を説いた石門心学の入門書である。 株式公開をしている企業は、原理資本主義的な荒波の中でガバナンスの有り方やステークホルダーとの関係に新たな枠組みを模索している。 一方、資本と経営が一体である日本の多くの中小企業は、徳のある経営者であれば其処で働く従業員も幸せであるが、往々にして経営者の私物と化し、汲々として働いているというのが実情ではないだろうか。 経営のリスクを一身に背負うオーナー経営者が、どのような形であれその思い通りに行う事が許されるのか、株式公開企業のような牽制機能を何処に持たせるべきなのか私自身悩んできた。 仕組みや法律として何らかの枠組み(箍)が嵌められないとすると、広く社会が認める規範が浸透するのを待つしかなく、その規範づくりから必要だ等と考えた。 しかし、既に江戸中期に石田梅岩が規範を精製し、社会に広める活動を行っていたということを本書で知り、雷に打たれたような感覚となった。 日本のオーナー経営者が、石門心学を常に鏡とし、道とし、心として経営に当る事が望まれる。 是非、現経営者、そして起業家たらんとする人に読んで頂きたい良書である。 惜しむらくは、後半の産業史的な記述だ。 全て心学の本質を解く内容であれば、経営者のバイブルの様に寄り添う本となったであろう。由井先生の次期著作に期待したい。