都市経済学の「基礎」ということで、数式などをあまり用いないで、土地利用、交通問題、都市の集積、都市のヒエラルキーなどといった都市問題を経済学的アプローチで解析している。ただ、章によってそのレベルに温度差があると思われる。例えば、都市の形成、都市の交通問題、などといった章は極めて平易で分かりやすく解説されているのに比して、地代の決定は相当難易度が高いと思われる。これは、アメリカの都市モデル、すなわち都心部がスラム化して地代が安く、郊外の地代が高くなるといった現象を説明するためのモデルを用いているからで、日本の都市とは合致しない。日本の都市のような中心部の地代が高くなるモデル、例えば単純だがトレードオフ・モデルなどを解説すればいいのに、なぜ、ここでアメリカの都心部の地代が安い、といった解説をするのか、著者の意図は見えにくい。するのはいいのだが、「基礎」の教科書で記述する必然性はないであろう。これなら、よほど古いが宮尾先生の『現代都市経済学』の方が学生のためになると思われる。一方で交通問題の解説などは非常に分かりやすく優れていると思われる。このように本書の問題はレベルに整合性がないことである。あるテーマでは、この本を使って解説したいと思わせるが、あるテーマではむしろ読まない方がいいのでは、と思わせるような解説がなされている。まあ、都市経済学というジャンル自体、アメリカで発達したものなので、アメリカの都市を解析するためのものであることは分かるのだが、日本で出すのであれば、やはり日本の都市の解析に役立つような整理をして欲しかった。これだと、経済学は実態を解析するには無駄であるとさえ思わせられる。悪いとまではいえないが、レベルに整合性がないこと、そのくせ「基礎」とタイトルにつけていること、一部、日本の都市の解析に役立たないことなどを考えると星三つがいいとこであろう。「基礎」を期待している読者は、古いのが難だが宮尾先生の『現代都市経済学』を読むことを勧める。ある程度、基礎を卒業した後、読むといいかも。