この本は「捉えどころのない世界を捉えること」に果敢に挑戦した本です。産業革命以降の世界の急激で同時多発的な都市化を著者独自の感性を交えながら、一冊のコンパクトな本の形に纏めあげた傑作です。副題の「野望と誤算」は都市を計画する事へ向けられた多様な野望とその失敗の積み重ね(=都市史)と言う意味ですが、この副題は同時に著者自身が壮大な都市史を一冊の本に纏めあげようとした行為そのものを指しているようにも思えます。
この本は建築・都市計画家のレム・コールハースの「錯乱のニューヨーク」に似てます。コールハースがその本でニューヨークの歴史を丹念に描いたとすればバーネットは世界中の都市の(産業革命以降の)歴史を描いたと比すれば「錯乱のny」を読まれた方には分かりやすいでしょう。
この本には教科書的に書かれたような都市史の本とは違う独自性があります。それはバーネットがアメリカ人である事が反映されているからでしょう。日本ではヨーロッパ史中心的な都市史観が根強いですが、この本を読めば「そういう視点もあったのか」と言う(アメリカ人からの)視点が読み取れるので、この点も面白い。
初心者も都市史に詳しい方も面白く読めるはず。でも情報密度が高いので一気に読むのは難しい。
第一章:産業化以前の伝統的な都市デザイン(この章はほんの数ページしかない)
第二章:モニュメンタルな都市(ロンドン計画、ワシントンDC計画、パリ改造、高層ビルディング等々)
第三章:田園都市と田園郊外(この章が特に面白く読み応えがある)
第四章:近代都市(いわゆるモダニズム、ル・コルビュジエ、CIAM、アメリカにおける住宅供給等々)
第五章:メガストラクチュア(バックミンスター・フラー、未来都市のアイデア、メタボリズム等々)
第六章:捉えどころのない都市の時代