私は卒業生の一人としてこの本の編集を務めました、内部からのレビューになります。なので評価が5なのは参考になりませんがご勘弁を。ただ、私自身が面白いと思っている事は事実ですし、この企画に賛同して本当に真摯に興味深い原稿を書いてくれた同窓生たちへの感謝の意も込めて内容の一部をご紹介します。
東京大学で建築家・槇文彦氏に学んだ我々のほとんどが、今もそれぞれの立場で建築・都市デザインにかかわる活動をしていますが、20年間の社会の変化とともに建築や都市デザインへ関与する方法も立場も非常に多様な領域に、そして留学生を通じて全世界に散らばっています。また我々は普段はあまり恊働して活動している訳でもありません。
それでも我々がここまで積み重ねてきた思想や活動にはなにか共通の「思い」があるように感じています。それは実は槇研究室ではデザイン技法そのものよりも、「都市」のもつ文化的な意義や、それを理解できる見識を重視した議論の場である事を意図されていた事に深く関わっていると感じています。
当時を感傷的に振り返るのではなく、建築と都市の最前線で働く立場から当時議論された思想と現在の活動について再考してもらいました。36編の多彩で少しセンシティブな「思い=あこがれ」は7つのカテゴリーに分けて収録してあります。今もトップランナーであり続ける槇文彦氏から、あとがきに「われわれが経験してきたこの数十年の都市、建築文化の変化を映し出すひとつの鏡であった」と評していただいたように、これは氏への戦況報告でもあり、いま改めて距離を測り直した決意表明でもあります。