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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ありそうでない世界にケチをつけられない見事な作風,
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レビュー対象商品: 都市と都市 (ハヤカワ文庫SF) (文庫)
「都市と都市」という、原題でも日本語訳でも非常に興味は惹くけど小説的魅力はあまりないタイトルが示すのは、範囲が入り組んでいるだけでなく、重なってもいる2つの都市国家。隣を歩いている人でも他国民であれば異質なものとして見てはいけないという国家です。荒唐無稽な発想に思われるかもしれませんが、本書を読んでみると、そうでもないような。 作中で東西ベルリンのような飛び地との違いは強調されているけれど、人類の歴史を見ると、共同体における不可触賤民とか政治的地位と宗教上の地位の乖離とか、こんな国家が存在しても不思議はなかった要素は大ありでしょう。 その「ありそうさ」加減と、説明的になりすぎず提示される社会通念のほどよさが序盤の大きな魅力になっています。 一方で、人物像に魅力が乏しいのも、この特殊な「見てはいけない」ものが目の前にあたりまえに存在する世界のぼんやりした輪郭のなせる技かと考えれば気にならないし、文化的な設定が無節操に思えるのもこの特殊な地勢を表現しているのかと納得させられる--なんだか欠点を欠点と指摘できないような巧妙な作風だなぁというしてやられた感を抱かされます。 そうして実際のバルカン半島あたりの歴史との比較に思いを馳せて読み進んでいるうちに、今度は事件の展開に引き込まれてゆく。これもうまい構造です。 ミステリを読みたくて本書を手に取る人がいるのかどうかわかりませんが、ミステリの要素もおざなりでなく十分なエンターテインメント性があり、ラストも鮮やか。 でもこの「ありそうでない」手触りはやはりSFならでは。最後まで欠点を指摘したいのに言い出せないような痛痒感を残しながらも、面白かったと言わざるを得ない作品でした。
9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
見える都市と見えざる都市のハードボイルド,
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レビュー対象商品: 都市と都市 (ハヤカワ文庫SF) (文庫)
殺人事件を追う刑事。しかし、彼の前には二都市間のシステムが立ちはだかる……と書くと、よくあるミステリなんだけど、この都市が一筋縄ではいかず、それこそが主人公。同じ場所でモザイク状に混ざり合った領土を有する〈ベジェル〉と〈ウル・コーマ〉。 国民は互いの国を見ないように教育されていて、それを違反すると、超越的組織〈ブリーチ〉に拘束されてしまう。極論すると、ベジェル人がウル・コーマの車に撥ねられたら違法なのだ。 また、明確に分かれている地域もあれば、隣同士で異国という場所もある。無論そこに行くのは違法なので、都市の中央にあるホールで国境チェックを受ければ、訪れることができる。 聞いただけど、ありそうもないんだけど、『アンランダン』や『ペルディード・ストリート・ステーション』などで、魅力的な街を描いてきたミエヴィルの筆力で、非常に強い実体を持っている。しかも、アンランダンやニュー・クロブゾンがファンタジーであるのに対して、ベジェルとウル・コーマは東欧のどこかという舞台にもかかわらず。 自分の経験で、クロアチアのスプリットからドブロヴニクに向かう道の途中で、一部だけボスニア・ヘルツェゴヴィナが突出している場所を通ったことがあるだけに、なんかヨーロッパのどこかにありそうなんだよね。旧共産圏(らしい)都市国家という巧みな設定もそれを補強している。 街歩き好きとしては、是非訪れてみたい。入国のための試験に落ちそうだけど。 ベジェル用語が多用され、なかなか世界が「見え」ず、入るまで結構時間がかかる。しかし、そこがいざ「見え」てくれば、その手は止まらなくなる。 そんな街ならではの犯罪あり、それがなければ成り立たないという意味で、異世界ミステリとしても傑作。 隣り合っているけど互いが見えない〈ベジェル〉と〈ウル・コーマ〉、両者を見ることができるけど越境がなければ動けない〈ブリーチ〉、この三者のシステムを使って、ボルルはどうやって犯罪を追っていくのかが、物語としての見所。 ラストは『ダークマン』を想起させ、ダークヒーロー的寂寥感を与えてくれる。
7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ニューウェーブ・チックなスプロール・ミステリー,
By ZEPHYROS (蒲田) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 都市と都市 (ハヤカワ文庫SF) (文庫)
人種と文化の異なる二つの都市がモザイク状に入り組んだ場所を舞台としたスプロール・ミステリー。パラレルワールドみたいに重なっているのではなく、ただ、入り組んでいるだけと云うのが良い。しかも、そこで発生した殺人事件に都市を越境しない様に見張るブリーチと呼ばれる存在や、二つの都市と民族の元となる(と云われている)先文明の伝説などが入り乱れる。ブリーチの自分達を見えなくする技術以外はSF的なガジェットは登場しないが、この都市の有り様を見て、山野浩一を想い出した。日本でなら、山野氏が書きそうな作品だ。そう云う意味では、クラシックなニューウェーブの香りも感じられる。
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