この分厚い議論が成立した事情が,あとがきの中に書かれている。当事者が誰かは詳らかでないにしても,要す るに,都城論を中国とその影響を受けた地域に限定してきた既存の歴史研究に対する強い懐疑が,著者をして,アジアの東西にまたがる壮大な考察 に向かわせたらしい。さすがに我が国のインド研究を代表する泰斗らしく,インド都城論―その思想,都城空間の特徴,そして東南アジアにおける インド都城の展開―に関する部分は,緻密かつ大胆である。中国とその展開―すなわち日本の古代都市空間―に関して言えば,細かな部分の議論に 不満はあるものの,その大胆さに首 肯できる部分は多い。いずれにしても,インド都城とその系譜(それはすなわち中国とその影響下の世界に隣接したものなのだが)を東アジアと並 行して論じることで,アジア都市の系譜を立体的に描き出した本書は,そのボリュームもあわせ,画期的な大著であることは間違いない。