知人から名著として当該著書を推薦されたのは遥か昔のことであるが、推薦に値する名著と納得しながら読み進んだ当時の感動が未だに記憶に残る。与謝蕪村を「郷愁の詩人」とは、実に的確な表現である。萩原朔太郎の解説の真骨頂といえよう。思い出したように時々書棚から取り出し、ぱらぱらと俳句を拾い読みしても、それぞれの俳句には解説と共に名状し難い懐かしさが伴う。
「蕪村の情操における特異性とは、第一に先ず、彼の詩境が他の一般俳句に比して、遥かに浪漫的の青春性に富んでいるという事実である」、と萩原朔太郎は述べている。
説明よりは、ここでは味わっていただくために、当該著書で取り上げられた俳句の中からいくつか引用してみよう。
遅き日のつもりて遠き昔かな
春雨や小磯の小貝ぬるるほど
陽炎や名も知らぬ虫の白き飛ぶ
愁ひつつ岡に登れば花いばら
春雨や人住んで煙壁を洩る
鶯の鳴くやちいさき口開けて
春雨や暮れなんとして今日も有