ヒマラヤに魅せられた一人の日本人。
著書はネパールで建築の仕事に携わり、やがてエベレスト街道を分け入った先に「ホテルエベレストビュー」を建築する。エベレストを毎日見ているうちにかつての登山熱が再び燃え上がり、数名のシェルパ、日本人のガイドとともに還暦をすぎてエベレストに挑戦する。
世の中には多くの登頂記があるが、著者のように撤退した人の記録は多くはない。
だが世界最高峰の頂きを踏めなかった人は成功した人たち以上に多い。
これは日常でも同じであり、どんなことも成功事例より失敗例の方が多い。
多くの失敗事例が積みあがっているからこそ、成功者は輝けるのである。
一方、失敗した者にはスポットライトは当たらない。
下山後、著者は周辺に感謝しつつ挑戦したことに清々しさも感じているようだが、やはり悔しかっただろう。できればあのサウスコルからやり直したいのではないか。
氏はその後ネパール国籍を取得し、今はネパールの政治家として彼の国を豊かにすべく観光に注力しているらしい。
人間は無念や未練を新たな一歩を踏み出すエネルギーに変える力を持っている。
氏もエベレストへの無念を観光事業で晴らしているのではないだろうか。
(了)