物語は、前作の「棄霊島」同様、相当古い話に遡る。
事件の真相を調べるにあたって、50年という歳月が、壁の様に立ちはだかる。
しかし、実は、この物語は、古くて新しい話でもあった。
今回も浅見光彦の推理が冴え渡るが、あまり兄の力を借りようとはしない。
そして彼は、またしも、事件の真相を調べる女性に、想いを寄せられる。
これまで彼に、想いを寄せた女性は、一体何人にのぼるのだろう?
ただ、この物語は、非常に真面目だ。
物語が追求するのは、あくまで正義であり、それ以上でも以下でもない。
ノリの軽い軽井沢の先生も登場しないし、幽霊話めいたテイストは皆無だ。
これまでの著者の作品では、軽井沢の先生が登場すると、コミカルで面白いという事で、歓迎する方もおられる。
私は、事件の質にもよると思うが、幽霊話は全く歓迎しないというのが、私の周囲の内田作品ファンの一致した意見だ。
人間の生き様にまつわる正義について描かれた力作だ。
含蓄のある作品であり、印象に残る。