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ドイツ連邦鉄道でこの遺失物管理所というのは決して花形職場ではありません。そこへ伯父のコネで就職したヘンリーは野心があるでもなく、どこか飄々とした感じで日々を過ごしています。とりあえず食うために職に就いたという程度の無気力な青年かという色眼鏡を通して読み進めていたのですが、これが意外と芯が強く、寛容の精神に富み、そして義理人情に篤い青年だということが見えてきます。
出世欲は相変わらずないにも関わらず、やがてヘンリーは自身の仕事に当初に比べれば熱意をもってのぞむかのような姿勢を見せ始めるところで物語は幕を閉じます。
物語展開に激しい起伏は見られません。職場の同僚である人妻パウラとヘンリーとの仲も、最初に予感させるほどの波風が立つことはありません。ヘンリーの飄々ぶり同様、物語も静かに進行するといってよいでしょう。
その点に物足りなさを感じないでもありませんでした。
翻訳にはもうひと踏ん張りほしかったところです。ドイツ語原文の過去形を日本語でも律儀にすべて過去形で表記したために、「~た」で終わる文章が延々と連なる結果となっています。リズムが単調になり、読んでいて味気ないという思いをしました。
「~ではないかと思った」とやらずに「~ではないか?」で切ってみたり、適度に体言止めを用いたり、思い切って現在形を混ぜてみたりという工夫をすれば、もっとテンポある翻訳文になったことでしょう。
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