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13 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
自分を遺失物だと思ってる人も、誰かが拾って届けてくれてる場所があるかもしれない,
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レビュー対象商品: 遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス) (単行本)
タイトルと各種書評に目を通すと、“物にまつわる人間ドラマ”といったステレオタイプなストーリーを思い浮かべるかもしれない。それも一面では当たっているけれど、この小説の魅力は主人公のヘンリーにある。物語は24歳の青年ヘンリーが遺失物管理所に着任するところからはじまる。これまでの人生でうまく居所を見つけられなかったヘンリーはこの職場をすっかり気に入ってしまう。曰く、“遺失物管理所ほど気持ちのいい職場はないし、楽しいし、おまけに想像力も刺激されます”。 育ちが良く、一見オプティミストに見えるヘンリーは、周りから「いつも思いつきに従って行動してる」「あなたは何でもお手軽すぎる」「ずいぶん自分が偉くて啓蒙的だと思っている」と揶揄されることもあるが、明るく人懐こくて、みんなの人気者である。そして実際のところ表面的な仕草とは裏腹に、結構深く物を考える“想像力”を持った奴なのだ。 辺境出身ということだけで差別される同年代の数学者や、思い出にすがって生きる同僚の老父、自らの存在感を轟音と暴力にしか見い出せない街の暴走族...そうした弱者への眼差し、シンパシー、一方で権威や出世にまったく興味を示さないって辺りもヘンリーの魅力である。 ヘンリーは世間に収まりの悪い自らを“遺失物”になぞらえるくだりがあるが、ヘンリーの一見能天気でピュアな心情も、多くの人々が失ってしまった“遺失物”なのかもしれない。 全編を通して軽妙洒脱な会話が登場し、いつまでも読んでいたくなるような居心地の良い小説である。遺失物の持ち主であることを証明してもらうための“お約束シーン”(芸人にナイフ投げをさせたり、子どもに笛を演奏させたり...)も楽しい。
15 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
飄々とした青年の物語,
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レビュー対象商品: 遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス) (単行本)
北ドイツの大きな駅とおぼしき場所の遺失物管理所。そこへ24歳のヘンリー・ネフが職を得たところから物語は始まる。ヘンリーは鞄を無くしたバシュキール人のラグーティンと知り合いになるが、彼との親交を通じて見えてくるのは、異邦人に対して不寛容な現代ドイツの姿だった…。 ドイツ連邦鉄道でこの遺失物管理所というのは決して花形職場ではありません。そこへ伯父のコネで就職したヘンリーは野心があるでもなく、どこか飄々とした感じで日々を過ごしています。とりあえず食うために職に就いたという程度の無気力な青年かという色眼鏡を通して読み進めていたのですが、これが意外と芯が強く、寛容の精神に富み、そして義理人情に篤い青年だということが見えてきます。 物語展開に激しい起伏は見られません。職場の同僚である人妻パウラとヘンリーとの仲も、最初に予感させるほどの波風が立つことはありません。ヘンリーの飄々ぶり同様、物語も静かに進行するといってよいでしょう。 翻訳にはもうひと踏ん張りほしかったところです。ドイツ語原文の過去形を日本語でも律儀にすべて過去形で表記したために、「~た」で終わる文章が延々と連なる結果となっています。リズムが単調になり、読んでいて味気ないという思いをしました。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
設定がいい,
By ask (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス) (単行本)
ドイツ北部の都市の駅構内の遺失物管理所に配属された若い男の経験する様々な遺失物にまつわる話。これは、例によって〈設定の勝利〉です。珍妙な落し物の数々、その落とし主たちがかいま見せるそれぞれの事情と人生、そういうバリエーションを次々に展開できるわけだから、なんとも心憎い題材ではないでしょうか。素直で元気が良くて心優しい人物が仕事を通して成長していく様子を克明に描いて、好感が持てます。社会の暗い面もいくつか描かれはしますが、爽やかな読後感が嬉しいです。 作者は練達の老作家で、77歳にしての書下ろし作品だそうで、いまだ健在を示したと言います。非常に読みやすい楽しい小説でした。
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