釜石市でご遺体の収容、身元確認、葬送に当たった人たちへのインタビューを丁寧に積み上げた一冊。遺体の腐敗を心配し、「今年だけは春が来てほしくない」と言った安置所の世話役。自分の腕から流れ去った乳飲み子の前で泣き崩れる母親。自分の目の前で津波に消えた人を、後日遺体として見つけてしまう過酷な現実……。取材に応じた人たちは過酷な事態に立ち向かったが、向き合えずに逃げ出した人たち、あるいは、火事場泥棒で檀家を増やそうとする寺の話などもさらりと書いていて、きれいごとばかりでは済ませていない。
新聞やテレビはどうしても生者の物語に焦点を当てたがる。だが、本当に前を向いて歩くためには、重い重い悲しみを受け止めることから。筆者の思いはそこにある。長く続く再生への苦しい歩みに寄り添うには、まず忘れないこと。忘れない為に、ぜひ手に取ってほしい。