初版が1974年だけあって内容は最新版とは言えないが、ともすると優生学的な発想に陥って恣意的な展開になりがちなテーマでも、高邁な思想と理想に基づき、現実を踏まえた立ち位置から書かれた啓蒙書である。
人類の将来のリスクを「核による人類絶滅」「人口の爆発による格差拡大とそれによる国家間緊張」「環境破壊、資源枯渇」「生物学的革命」の四つに大別して、その中で遺伝学を中心に生物学の過去、現在そして未来を展望している。さらに偉大な足跡を残した遺伝学者の業績も紹介するなど、力の入った啓蒙書だ。
中盤で語られる物理学者シュレディンガーの遺伝の原理に関する本質を喝破した示唆には非常に感銘を受けた。これによって若い物理学研究者が生物学研究へと転向し、古典的遺伝学に終わりを告げたというのも頷ける。同時に、物理学の基本原理が多くの科学に敷衍することが出来るという事実にも改めて驚かされる。
理系の教科書以外ではあまり聞かない培風館の一般書というのも珍しく、古典的名著という感じだ。