ヒトゲノムプロジェクトの代表を務めた著者による、最新の遺伝子治療について解説した著作。
すでに、遺伝子治療は数多くの実績がでていることがよくわかる。
乳癌の再発予防のため化学療法を受けようと医者に勧められたが、遺伝子検査の結果再発の可能性が低いとわかったケース。
慢性骨髄性白血病の原因となるキメラたんぱく質の作用を阻害する薬剤開発。
嚢胞性繊維症への遺伝子解析による薬剤の劇的な効果。
HIVに耐性を持つ人たちの遺伝子変異から開発された薬剤が効果をあげていたり、マラリアや結核インフルエンザまでもかかりやすさに関する遺伝子を解析することにより、効果のある薬の開発が期待されているという。
イレッサに効果のある遺伝子の型をもつ10%のグループの発見。
いくつもの実例により、遺伝子診断により誤った治療から免れた例も挙げられている。
くわえて、ウイルスを使った遺伝子治療により遺伝子病を治療した事例など、これからの医療のありかたを劇的に変える可能性を感じる。
また遺伝子操作には倫理的課題が多いがそれも本書ではきちんと押さえている。
ユダヤ人に多かった幼児のうちに死を迎えるテイサックス病は保因者スクリーニングや出生前診断によりほぼ根絶されたという。一方で、アフリカ系アメリカ人に多い鎌状赤血球については、人種問題もかかわり計画は頓挫したという。
アメリカではすでに民間で遺伝子検査がおこなわれ、各自の疾病リスクがわかるようになってきている。
著者は、これにより病気の予防意識を高めるというプラスの効果を指摘する。
最終章で、数十年後に予測される医療を二通り描いているが、もちろん明るい未来を期待したい。
それにしても、「人間はだれでも、遺伝子の欠陥を持っている。遺伝子的にパーフェクトだという人間はどこにもいない。」という言葉に、生命の本質を感じる。