本書は社会心理学者であり、コロンビア大学ビジネス
スクールで教鞭をとる著者が「選択」をテーマにして自
らの研究を中心に社会心理学における知見をまとめ
ている。
「選択」というテーマでどういった内容を述べているか
というと、大きく2つの点に分けられる。ひとつめは、
私たちが自由に選択しているつもりでも、選択場面の
状況や選択肢の提示のされ方から影響を受け、特定
の傾向をもっていることである。ふたつめは、私たちは
ある選択を選んだときにその選択に対して満足もしく
は不満の意識をもつが、満足度を高める要因は何か
という問題である。
社会心理学分野の様々な先行研究の知見や著者が
実際に行なった研究が述べられている。平易で丁寧
な表現で、読み物として非常に面白い。また、アカデ
ミックな知見を日常生活の文脈に沿うように解説して
あり、題名ほど堅苦しい内容ではない。
少々細かいことだが、“The Art of Choosing”のArtは
「芸術」という意味ではなく「人文科学」という意味で用い
られているから、直訳で「選択の科学」で間違っていない。
(“science”は「自然科学」であり、本書の場合は不適当)
慣例的にもこの手のタイトルに使われるArtは科学と
訳されている。本文と訳者あとがきで「芸術」という表現
を使っているのは、レトリックにすぎないと思う。余計な
おせっかいではあるけれども他のレビューを読んで気に
なったので。