本書を手に取ったのは、学校選択制度に関するレポートの作成の際に参考にしようと思ったことからだった。そもそも、学校選択制度とは、「従来、義務教育段階においては、児童・生徒たちは住む居住区(住所)によって通学する小学校と中学校が決められてきたが、これを保護者の希望により就学する学校を自由に選択できるようにする制度」である。しかし、この制度をめぐって推進論と反対論が存在している。そこでは、推進論と反対論の主張を取り上げ、次にアンケートをとるなどの調査をもとに両論を検討している。本書をもとに以下のことが分かったので、例をいくつかあげたい。
東京都品川区、豊島区、杉並区、荒川区や埼玉県川口市の教育委員会が行ったどのような基準で学校選択が行われたのかというアンケートでは、各学校が打ち出す「特色ある学校活動」を基準としている割合は少ないという結果が出ている。それよりも、「学校の近さ」、「友人関係」や「学校の施設・設備」で学校を選択している児童・生徒と保護者が多いことが分かる。加えて、風評やうわさによって学校が選択される影響も大きく、上記の選択理由も含めた上で見ると、ある特定の小・中学校に児童・生徒が集中するという現象が、実際に起こっているといえる。確かに限られた資料の中での完全な判断はできないが、資料を見る限りでは推進論の根拠の1つである「特色ある学校づくり」の根拠は弱いといえる。
また、推進論の唱える学校選択によって学校間競争が生まれ、教職間での切磋琢磨が期待できることと反対論が主張する過度の競争を招く恐れがあるとすることも一概にはいえない問題である。さらに、反対論が懸念している学校と地域との関係が希薄化する恐れがあるという主張もはっきりしないのである。
学校選択制度を「良いのか、悪いのか」を判断するには本書だけでは不十分ではあるが、本書はその問題を考える上で参考になるであろう。