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48歳の経験・知識と14歳の肉体をもって追体験する新しい過去は、全く別の輝きを放つ。雄大なる山陰の空気に触れ食べる弁当の旨さ、苦手だった体育も、つまらなかった勉強も、全てが新鮮に感じる。話すこともできなかった憧れの人との濃密な時間。思い出すことさえなかった友との友情。
しかし、決定的な過去の出来事は、小癪な干渉を厳然と拒絶する。知らなかった真実を知った。ただそれだけ。何も変わらない。ただ、子供の頃の自分はなす術がなく、大人の自分は父の秘めた想いに共感し諦観する道を選んだにすぎない。
「きっと誰も大人になんかなれないのだろう・・・ 人は気持ちの奥深いところに 子供のままの自分を持ち続けている・・・」
主人公は、最後まで標準語でしか話さない。故郷の言葉を失った異邦人である。結局のところ、傍観者にすぎないのだ。その不確かな存在は、当然のように大いなる時の流れ、歴史と呼んでもいいかもしれない濁流に呑み込まれ、いくつかのささやかな未来の追憶はふいに中断される。そして、現実に戻る。
ラストシーンを、現実か虚構かと問うことは無意味である。過去は何も変わらなかった。しかし、主人公は確かに答えを見つけることができたのだ。父や母との二度目の別れをとおして。
郷愁のなかに新たな発見があり、未来がある。美しい大人のおとぎ話である。
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