1976年に刊行された「現代カメラ新書26 遠野物語」を再編集した作品。
時期的には「写真よさようなら(1972年)」以降のスランプに陥るなかで撮り下ろされた作品と位置づけられるだろう。
体裁としては写真集というよりもフォトエッセイと呼ぶにふさわしい。
そしてこれは僕の眼の問題なのだろうが、エッセイを読む前と後では写真の見え方ががらりと変わってくる。
はじめは静謐な死の匂いが立ち昇ってきたのに対し、読後は、写真家森山の目の悦びのようなものが伝わってきてそのしたたかさに圧倒されてしまうのだ。
芸術家の前世はシャーマンだった、とも言われているが、原景と現実と幻影のあわいを自由に往還する氏の眼差しを追っていると、そんな風説がふと真実味を帯びて感じられたものだ。