登録情報
|
|
あなたの意見や感想を教えてください:
|
||||||||||||||||||||||
|
最も参考になったカスタマーレビュー
1 人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
明治文壇における怪談好きたちの相互影響関係,
By
レビュー対象商品: 遠野物語と怪談の時代 (角川選書) (単行本)
本書は百物語についての著書のある1958年生まれの怪談専門誌『幽』編集長が、柳田國男『遠野物語』刊行百年に当たる2010年に刊行した本である。本書によれば、明治後期は怪談の復興期であり、欧米の影響を受けた井上円了の妖怪学が議論を呼び、出版業界と結び付いた怪談会が盛んに催された時期であった。柳田國男、泉鏡花、水野葉舟、條野採菊、岡本綺堂らは実はこの怪談会の関係者であり、こうした文壇の怪談ブームの流れの中で、水野が稀有な語り手である佐々木喜善を、稀有な文才を持つ聞き取り手である柳田に引き合わせたことで、『遠野物語』が生まれたのである。したがってこの書は日本民俗学の誕生を告げる記念碑的な書物であると共に、芥川龍之介らに影響を与えた至高の怪談実話集でもあるのだが、近年までこの点は看過されてきた。実際のところ、柳田は膨大な怪談書を濫読し、また旅先で奇談の聞き取りも行い、それらの真偽の鑑定を行っていた。彼は円了による合理的裁断に反発し、怪談の出所の確実さを重視して、純粋な怪談を偽りの怪談から分離しようとしており(この態度は水野や、復刻資料として本書に添付されている「日本妖怪実譚」とも共通している)、その過程で彼は怪談という語の使用に慎重となり、また山人の奇談に関心を絞り込んでいった。著者はこうした明治の怪談好きたちの人柄、交友関係、作品相互間の影響関係を生き生きと具体的に跡付けつつ、怪談文学史の系譜上に『遠野物語』を位置付けるのである。私見では、以上のような本書の論証は説得的であり、『遠野物語』に新たな方面から光を当てる研究である。怪談誌編集者ならではの視点もあり、文章も具体的で比較的平易である。ただし、山人探究から常民探究への柳田の方向転換とこの視点がどう関連してくるのかは、本書からは定かではない。
あなたの意見や感想を教えてください: 自分のレビューを作成する
|
|
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|