〈古典部〉シリーズ初の短篇集。
前三作の前後にあった出来事を書いた短篇が7篇、時系列順に、
収録されています(「初詣」「バレンタイン」など、季節ネタも多数)。
期間としては、奉太郎が神山高校に入学し、約1ヵ月が経過した2000年
4月末から新年度を目前に控えた春休みにあたる2001年4月初旬頃まで。
要するに、彼らの〈高1時代〉に相当します。
収録された短篇は、単体でも十分楽しめますが、1年の流れのなかで奉太郎
の語りに寄り添って読み進めていくことで、“省エネ”主義を掲げる彼の心境が
どのように変化していったのか、トレースできる仕組みになっています。
ところで、本作を読んで私が一番に感じたのは「千反田える、キャラが立ったなあ〜」というものでした。
それは何も今回、奉太郎と千反田えるの対話劇になるシチュエーションが多かったことや、衣装の七変化
で楽しませてくれる(もっとも、イラストはないのですが)といった表面的なことだけが理由ではありません。
千反田えるは、豪農・千反田家の一人娘という立場のため将来、共同体の中で責任ある役割を担うことが
宿命づけられています。しかし本作における彼女は、そのことを所与のものとして受け入れた上で、自分に
実現可能な未来を見据えようとします。
つまり、古典部員の中で、彼女がある意味もっとも〈大人〉だったということが今回明らかに
されるというわけです。そうしたことから、今までやや平板に感じられた彼女のキャラに本作
で奥行きが出たように感じられました。
これまでの千反田えるには、“省エネ探偵”である奉太郎に推理をする動機と免罪符を与える牽引車的
役割が割り振られていました。奉太郎にしても、当初は自分のペースを乱す存在として、千反田を敬遠
していたのですが……近い将来、奉太郎が自分から誰かのために推理をするような日が訪れるのかも
しれません。
ともあれ、古典部2年目の活動が楽しみです。