高校生までを過ごした福井では黒板と木彫りのお盆(我谷盆)と漆器と眼鏡。20代の青年期を過ごした京都では木工所、茶筒、鍛金、陶芸の製作場などを訪れ、手仕事で作られる道具と時代の流れに思いを馳せます。そしてその後20余年を過ごし現在も居を構える松本ではクラフトフェアと自身の作業場、付近のことなどを1つ1つはごく短いエッセイで語ります。
目次は福井、京都、松本の順に三都市に分かれていて、ページ数はちょうど三分の一ずつくらいですが、その都市や訪れた場所に関連するエッセイだけではなく一般的な考察も間々に含まれているので、だいたいボリュームが等分になるように構成したということのようです。
表紙の簡素な美しさに惹かれて著者の本を初めて読みましたので、作品を見たことはありませんでした。しかし、押し付けがましくなく、理解しがたいこだわりを振りかざすことなく、分かり易い言葉で実に淡々と爽やかに手でモノを作ることについてのご自身の考察を綴ってあって、こういうことを考えてモノを作る人の作品(製品?)に興味を惹かれました。
今度はぜひ著者の作品を見てみたいと思っています。この本には訪れた方の作品の美しい写真は数点掲載されていますが、著者ご自身の作品はひとつも載っていませんでした。