今、最も注目される作家の一人、宮下奈都さんの「短編集」。
それぞれ異なる人物を主人公とした12編の短編集と言うことで「スコーレNo.4」や近作「よろこびの歌」で読み手を唸らせた緻密な構成の妙はここにはありません。
それでも各編にはそれぞれの主人公たちの苦悩と葛藤、そしてささやかな喜びやほのかな希望が丁寧に描写されていてつい引き込まれます。
各編は大体15p前後なのですが、これは意外と難しいボリュームではないでしょうか。
主人公の思いを描くだけなら持て余す、かといって大きな展開を盛り込むにはスペースが足りない、そんな分量だという気がします。
12編それぞれにアイデアが盛り込まれていて派手さこそありませんがバラエティに富んだ印象。
正直言えば12編全てが粒揃いとは言い難いのですが、そこはさすがに「言葉の料理家」。
主人公の感情の機微を繊細な表現と言葉の選択で描き出しており、読み手はその絶妙な匙加減に舌鼓を打つ他ありません。
だから、やっぱり読んでいて「味わい深い」。
ごちそうさまでした。