一番知名度のある「インド夜想曲」を読んで感激した人は、次にはこの「遠い水平線」を読むことをお勧めします。最高傑作と言われる「供述によるとペレイラは」、短篇集の「逆さまゲーム」などは、この「遠い水平線」を読んでからのほうが、タブッキの世界をより理解できるのではと思います。「インド夜想曲」が好きならば「遠い水平線」でもがっかりすることはないでしょう。
「遠い水平線」もミステリー的な導入です。身元不明の他殺死体の詮索を始める主人公。物語性のあるストーリーに引き込まれつつ、テーマは深く哲学的です。各章が短くて、ひとつのエピソードが重ねられていくさまは「インド夜想曲」と同様です。インドのようなエキゾチックさはなくても、ここでの幻想性の高い街の描きかたは秀逸です。
やはり須賀敦子さんのすばらしい訳があるのも大切です。残念ながら死去されてしまいましたね。繊細で、やわらかく、美しい須賀氏の訳は、タブッキという稀代の作家を日本語で理解するための最高の案内人でしたね。買って手元に置いておきたい本の一つです。何度読んでも新しい発見がある深みのある本です。