三部作の前作二編をそれぞれ面白く読みましたが「非道」はともかく「家」とはなかなかつながらない、
ということなどすっかり忘れてこちらも面白く読んでいました。
すると終盤になってあの人が登場、ああ、そういうことか!
じゃあ亀の太夫はあの!
と、びっくりするやら嬉しいやら、ちょっぴり切ないやら。
人の名前をすらすら覚えられる人なら早い段階で人物同士のつながりに気付いてもっとわくわく読み進められるかもしれません。
だから、これ一編だけでも十分に楽しめると思いますが、前の二編を読んでからのほうがよりお薦めです。
個人的には「非道」で地味に登場した人物になぜか心惹かれていたら最後の最後に素晴らしい見せ場があって感激、思わず涙が。
ところで、謎で引っ張る小説ではありますが、ミステリー小説だとは思わないほうがいいです。
直木賞を受賞した「吉原手引草」もミステリー小説だと思って読んだ人は物足りなかったようですが、
どちらも「おはなし」を楽しむための仕掛けとして謎を用意してあるのにすぎません。
しかし「吉原」と比べるとかなりこってりした味わいに感じます。
「吉原」がそれ以前に直木賞候補作になった作品への批評を受けてか、かなり軽く口当たり良く洗練された仕上がりになっているのに対し、
こちらが本来の姿、好きにやらせていただきました、ということかと思います。
高い知性と教養を惜しげもなく趣味に注ぎ込んで夢幻の花を咲かせる姿勢に、
70年代後半から80年代初めにかけての最盛期の少女マンガのテイストを感じます。
「東洲」や「仲蔵」の濃い世界が気に入った方は、ぜひこの三部作にどっぷりつかってください、気持ちいいですよ。