道元がテーマだが、それはすなわち、「自然」がテーマでもある。
よくあるのは、自然はいいもの、自然は素晴らしい、自然を大切に、と、
訓辞のオンパレードの本だが、この著者は、そういう馬鹿の一つ覚えの
様な書き方は一切しない。和歌と、その素敵な注釈(現代語訳)により、
読者の目の前に風景や雰囲気が広がり、道元が和歌を作りたくなった、
その動機となる光景が浮かび上がる。本当にそういう中に身を置いて
みたくなる。読んでいて、和歌の動機や背景がとてもよく伝わってくる。
高尚な仏教思想や、伝記を前面に押し出した本ではないと思う。また、
知識のひけらかし的な、重箱の隅をつつくような語句やテキストの
解析みたいなことも一切しない。(内容は深いのに、読みやすい!)
道元が自然をどう感じたか、それが主題であると思う。「文学」と
称するにふさわしい、上質な本。