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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
哲学者道元の考えたこと,
By 池上閑人 (東京都大田区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 道元―自己・時間・世界はどのように成立するのか (シリーズ・哲学のエッセンス) (単行本)
シリーズ・哲学のエッセンスの1冊であり、本文110頁弱の小著ながら、中身は濃く短時間で読了できるような本ではない。膨大かつ難解な道元の主著「正法眼蔵」の真髄について、日本倫理思想史を専攻する著者が、論点を「自己と全体世界の関係」(存在論、認識論、世界観等)と道元独自の「時間論」に絞って、明晰な文で考察している。「正法眼蔵」からの引用には原文に続いて現代語訳が付されているが、この他に本書の読み易さ、説得力を高めるものとして以下の3点が挙げられる。 1つには、「空」「悟り」「解脱」「現成」といった仏教用語を、宗教者でなく哲学者・思想家の言葉で丁寧かつ正確に解説している。このことでいちおう道元の論理の筋道を辿ることができる。2つ目は道元に独特の漢文の読み下し―例えば、「(一切衆生)悉有仏性」は「悉く仏性あり」ではなく「悉有は仏性」と読み、「諸悪莫作」は「諸悪作るなかれ」ではなく「諸悪は莫作なり」と読む―を道元の立場でその理由を付して説明している。3点目は煩瑣な話になるところを、著者の巧みな工夫で興味深い図に表して解説していることである。 評者はこれまで仏教書に馴染みが少なかったが、古今東西の大哲学者がそうであったように真摯に真理を追究する道元の知的営為に感動を覚えた。また著者の言う道元を読む楽しさと道元の文章の魅力を堪能した。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
初心者向きのようで、そうではない、深い一冊,
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レビュー対象商品: 道元―自己・時間・世界はどのように成立するのか (シリーズ・哲学のエッセンス) (単行本)
装丁の柔らかい色合い・ページ数の少なさ・専門用語のない親切な文章・文字も読みやすい大きさで行間も広い。ぱらぱら、とページを捲ってみた感想としては、「初心者向けの入門書か」・・・それで気楽に購入したが、数ページ読んで、そうではないと感じた。 本書は道元の一面をかなり深く掘り下げた、哲学的な一冊だ。『正法眼蔵』全解読には手が届かないが、初心者向けは面白くなくなってきた、現在の私は良書だと感じたけれど、哲学・思想・宗教に関してまったくの初心者がいきなり読んで理解できるかどうかは疑問。私はご飯粒を拾いながら味わうように読み、一つの章が終わるといったん休憩、こんな薄い本なのに三日がかりの読破、「頭の運動」としては、かなり激しかった。これがすらすら読めるようになると「少しだけ、道元を理解した」と云えるのかもしれない。私はまだまだ遠そうだ。 そもそもが「不立文字」の禅を文章で解読・理解するのは難しい。私は長年「禅とは、いいことを云っているようでいて、最後にはわけがわからなくなる理屈」だとみなし、「わけのわからなさ」を面白がってきた。だが本書のテーマになっている一点が(自分なりにだが)理解できたとたん、のめりこむように興味深く感じられるので、本書は「ほんとうの意味での入門書」だと、云えるかもしれない。例えばP79の図、現実から空へ(解脱)、空から現実へ(現成)、これに納得できないと本書のすべてがつまらないだろうけれど、分かればすべてが興味深い。 また、本書では、道元流の読み方、表現方法についても、少しだが解読されているので、『正法眼蔵』への敷居が、少しだけ下がった。著者と私の考えは、少し違っているなと思ったけれど、「それで良い」と、道元流の表現方法が頷いてくれているようで、読後感は愉快だった。『正法眼蔵』だけでなく、すべての書籍を道元流に読んでみても面白そうだな、と感じた。良書。 ところで同じく敷居高く感じるハイデガー、もし同じ著者なら同シリーズで迷わず購入しただろうが、それぞれのテーマにより著者が違うので、とりあえず保留した。
35 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
根本教説を明示する力作,
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レビュー対象商品: 道元―自己・時間・世界はどのように成立するのか (シリーズ・哲学のエッセンス) (単行本)
著者は日本思想史研究者として知られた人。宗門の立場ではなく、哲学的な視点から『正法眼蔵』を明快に読み解く。余計な枝葉を捨てて、全体の叙述を「無自性―空―縁起」という根本教説の一点に絞り込んだのがよい。読者はこれで、道元の思想の全体像を掴むことができる。大乗仏教の真髄は、たんに「他者を救うこと」にあるのではなく、「無知の克服による自己と他者の救い」にある(p11)。「真理の探究とその伝達」こそが、道元の生涯のテーマだった。我々の日常的な世界像は、生活実践と関心にもとづいて作られており、その目的に適うように言語的に分節化されている。「もの」には固有の本質(=「自性」)があるという”常識”もまた、この分節化に支配されている。とすれば、「真理の探究」は、この”常識”を厳しく吟味することになる。道元は、世界を実体の集積とみなす”常識”から自由になるために、項ではなく関係の全体性として世界を捉える。世界の真の在り方は、無数の事象が「互いに原因(因)や条件(縁)となり合い、複雑な関係を結びながら、相互相依し合って成り立っており」(48)、実体のようなものは存在しない。これが「無自性―空―縁起」というテーゼである。本書の優れた点は、この構図と道元の時間論をうまく重ね合わせた点にある。たんに”常識”から解放される「解脱」だけではなく、その「空」の立場から世界を新しく見て取る「現成」という双方向の運動こそ、真理の立場である。この「現成」に、道元の「有時」や「今」という時間論の独創性がある。つまり、因果的な項の連鎖や流れとではなく、存在の全体を新しい関係性のもとに見て取る「永遠の今」という「空そのものの時間化」こそ、「今」の真義なのである(105)。
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