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本書ではその前提と実際の過労の事例の分析から,まじめで責任感が強く他者に気を遣う「メランコリー親和型性格」の人が,まわりの人からの信頼を受けて非常に重い責任を感じ,一人で大量の仕事を背負って孤独に超長時間労働に陥る時にこそ過労死・過労自殺が生じている,と指摘する.
この構造には日本型の「曖昧な職務分掌」が深く関係していて,「自分の職務」が不明確であるがゆえにまじめで責任感が強い人ほど大量の仕事を背負っていくことになるという循環が見られる.
この構造が過労の全てではないとは思いますが,実際の過労死・過労自殺事件の構造でこのようになっているものは非常に多いと思います.このことは,なんとなくはどの論者も感じているようではありますが,本1冊かけて詳細に論じてあり参考になると思いました.
経営学を学び、また自分もうつ病の患者である立場から、職場のメンタルヘルスについて興味を持って調べている私にしたら、これはとても重要な先行研究だ。職場のメンタルヘルスについて研究している人は産業医や精神科医ばかりで、経営学者でこういうことをやっている人を見かけたのは初めてだ。で、この本から、経営学の切り口からでも研究できる可能性を感じて勇気づけられた。
過労死、過労自殺という形で、死にいたるまで働く人は、強制的に働かされているのか?それとも自発的な意思によるものなのか?
過労死・過労自殺者の多くは、頼まれるといやと言えず、職場の仲間や顧客、取引先への責任をほとんど無限なものとして背負い込んでしまう「メランコリー親和型気質」(これ、私もあてはまる)である。
一方、彼らが働く日本の職場では、アメリカの職場のような明確な職務分担がなくて、わざとあいまいな分担しか定めないことでメンバーの積極的な協業を促そうとしている。
すると、メランコリー親和型気質の人は職場のルールに守られることなく、どこまでも仕事を抱え込んでつぶれていく・・・
対策としては、個々人が、もっと仕事に対して限定的にかかわること、私的な空間や家庭をかえりみよう、と結ばれている。
メランコリー親和型気質、というのは精神医学の言葉。いっぽう、「日本の職場」を分析した部分では、経営学者らしく、職場についての先行研究を豊富に引用して分析してあった。一見関係なさそうな精神医学と経営学を融合して、本を一冊つむぎだすことができるんだな!と、かなり感心。
従来の研究では過労死の原因を長時間労働に起因させた上で、
なぜ働く人々は長時間労働を行うのかという面が解明された。
それは日本の企業社会に見られる労働組合の交渉力の弱さ、経営者側の権力の強さに加えて日本的な柔軟な働き方にあるとされた。
このようなアプローチ方法は経済学や社会学、政治学の枠組みから検討されることが多かった。
大野氏はこのような研究動向を踏まえながらも、
それでは過労死にいたった人々の内面に踏み込めないのではないかと批判的関心を抱く。
大野氏は、総理大臣までも過労死にいたる日本の社会を労使関係的なアプローチから説くのではなく、日本社会全体の働きすぎ構造から解き、従来はあまり検討されてきなかった、過労死にいたった人々の心理に注目する。
その意味で、大野氏は経済学(労使関係)的なアプローチに加えて心理学をも融合させ過労死問題を解明したユニークな著作である。
私自身も読んで大変勉強になることが多かった。
若干私見を述べれば、日本において過労死にいたる人の大半はやはり企業で働く「労働者」であるのは事実であるのだから、いまだに労使関係的アプローチから解く有効性はあるのではないかと思っている。
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