夜明けも遠い時刻に私立探偵リュー・アーチャーを訪ねて来た青年は、閉じ込められていた精神病院から逃げ出して来たと言います。彼の兄の手で不当に監禁されたのだと訴え、最近死亡した上院議員だった父の本当の死因を調べて欲しいと依頼します。リュー・アーチャーがその個性を確立した作品と謳われていますが、「さむけ」や「ウィチャリー家の女」「一瞬の敵」などのリュー・アーチャー像を評価する立場から言いますと、まだまだ古いハードボイルドの殻を引き摺っている感じは否めません( 小さな事にこだわる、自己憐憫、都合の良い暴力シーン等など) 。しかし、そこは巨匠ロス・マクドナルド、意表をつくラストが用意されていて、完成度の高いミステリーに仕上がっています。リュー・アーチャーファン必読の一冊でしょう。ただ、中田耕治氏の翻訳はー失礼ながらーひどいものです。特に会話部分における統一性のなさには大いに不満が残りました。中田氏だけでなく編集者にも責任はあるわけですがー。