沖縄密約に関する政府の秘密保持対国民の「知る権利」を争うの裁判が展開されていく。熾烈な論戦が裁判所で交わされる一方で主人公は職業的に抹殺され、家族も崩壊の危機にさらされる。検察、弁護士、外務官僚、政治家たちがそれぞれの立場でそれぞれの組織原理や正義を貫いてゆくドラマチックな展開を堪能できる。
確かに面白い小説なのだが、これまで著者の作品で読んできた「不毛地帯」「白い巨塔」「華麗なる一族」「大地の子」「沈まぬ太陽」などに比べると、ズシリと腹にくいこんでくるような人間や社会存在の描写が少ないように思われる。裁判経過が多く、公判答弁や判決文などの文章が多いからだろうか。本事件は行政判例100選に掲載されているような有名な事件であり、その法律的解釈に関する説明よりも、著者の抜群の構想力が発揮される人間ドラマにより重点を置いてほしいと思った。