インターネット上のゲームサイトで、
31歳の男性と20歳の女性が知り合うところから、物語は始まる。
1編50ページほどの短編集である。
しかしそれぞれの短編がつながっているから、
連作短編集というより、長編の中の1つの「章」として読んだほうがいいと思う。
しかし残念なことに第5編の「回流」で、未完となっている。
「回流」が発表されたのが2006年の3月。
藤原伊織さんがなくなったのが2007年の5月だった。
主人公の一人である31歳の男性が父親の「遺品」として持っている拳銃。
もう一人の主人公の女性の父親は刑事。
そこに、スーツを着て自転車に乗った謎の男が……。
物語はここからどう進むのか、藤原伊織が用意していた結末は……。
カバー写真にある弾丸と、針金でつくられた自転車が何を意味するのか。
すべては謎のままだ。
藤原伊織ファンでなくとも、何が何でも読みたいところで終わってしまっている。
しかし、未完とはいえ、充分に読み応えはある。
もうひとつ。遺作となった「オルゴール」。これがいい!
中編だが、こちらは完結している。ひと言で言うと、切ない物語である。
だから、買って決して後悔はしない本だと思う。
最後にこの切ない作品を残し、おそらくは長編ミステリーになるはずだった
「遊戯」を未完にしたまま亡くなったことが、
藤原伊織という作家をそのまま象徴しているように思う。
「遊戯」から始まる連作は未完に終わっている小説だから、
いくら読み応えがあるとは言っても消化不良はあるだろう。
しかし私はこの本を、藤原伊織さんの「遺品」として買い求めた。
大切にしたい。