著者のElliott Soberは、生物学の哲学を30年近くに渡ってリードしてきた人物である。本書は彼がこれまで扱ってきた(あるいは本書以降でも発展させ続けた)テーマを簡潔に紹介したものであるが、彼の議論は常に生物学の哲学の中で重要な役割を果たしてきているので、彼の議論の紹介を生物学の哲学の入門と呼んでも差し支えは無いだろう。
ただ、本書の評価を行うのはある意味非常に難しい。というのも、本書で扱われているテーマ(選択の単位、創造論、適応主義など)に関して、(少なくとも生物学の哲学において)Soberの議論を知らずに論じるというのは、Darwinを知らないで進化について語るようなものだからだ。もちろん、個別の議論内容に関しては批判も少なくないし、議論の的になってきたものも多い。だが、誰しもが一度は参照すべき議論を簡潔に紹介したものとして、本書の価値は揺るぎないものである。
ちなみに、各章のテーマをさらに展開させた著作には次のようなものがある。
第1章:進化論とは何か?:The Nature of Selection (1984)
第2章:創造論:Evidence and Evolution (2008)
第4章:選択の単位の問題:Unto Others (1998), with David Sloan Wilson
第5章:適応主義:Adaptationism and Optimality (2001), with Steven Orzack
第6章:体系学:Reconstructing the Past (1989) [邦訳は三中信宏訳『過去を復元する』蒼樹書房。この邦訳はしばらく絶版だったが、訳者の日録(dagboek)によれば別の出版社から近々復刊の予定らしい]