最近、メディアに「進化」の文字が氾濫している。私自身も進化という言葉を安易に使っていたが、本書では進化を丁寧に再定義しており、読み進めるうちに、なるほど世の中で起きている様々な進化を、改めて認識する楽しさが得られた。それは、経済の主要なカテゴリー(商品、技術、行動、制度、組織、システム、知識の7カテゴリー)が進化の視点で整理されることで、その変化の特質を捉えることができるということである。経済の進化するこれら7つのカテゴリーを改めて見てみると、これらの複合的な構造に気づく。例えば「商品」であれば、その構成要素としての生産技術や素材・デザイン・ノウハウなどの結集であるとともに、バラバラに分解すればその各々の要素が個別に進化する特質をもっているのである。それゆえに、模倣が必ずしも同じ結果を生むものとはならないのである。こうしたことも合わせて、実は経済学と生物の進化理論は驚くほど似ているということも新しい発見だった。
本書の良いところは、理論の概説だけにとどまらず、関連理論や具体的な進化事例(なんと63事例!)が丁寧に書かれているところにある。興味ある事例から読んでいったが、メディアで「進化」と叫ばれている現象の本質を垣間見ることができる。
進化経済学という名称は、本書を手にして初めて知ったが、この新しい経済学の概念である進化経済学には、定義として確立したものはないのだという。それでも、本書を読めば、日々の経済現象から経済史にいたる経済全般にわたる知見を得られる。そういう意味で、本書は経済学の理論的基礎を提供しながら、そのうえで、伝統的な経済学の限界を進化の視点から突破し、さらに代替する可能性を秘めている。私自身が新古典派の経済学に疑問を持っていることから、大変興味を持って読むことができた。難を言えば値段が高いところか・・・