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5つ星のうち 5.0
2つの心理学領域の融合による、人の本性についての重厚な理論,
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レビュー対象商品: 進化発達心理学―ヒトの本性の起源 (単行本)
自然科学においては当然視されている進化理論に基づいて、ヒトという種がどのように進化して現在に至っているかを説明する進化心理学(スティーブン・ピンカーなど)と、個々のヒトが生まれてから成人になるまでにどのように発達していくのかを説明する発達心理学が、見事に融合しています。発達心理学については、私自身不勉強でしたので、あまり知識がなかったのですが、これほど進化心理学と上手い形で融合するものだとは思っていませんでしたので、先ずそのことに驚きました。 よく考えてみれば、発達心理学は、ヒトが成長していく過程の特定の時期において特定の領域が発達することを解き明かしていますので、進化理論と整合するのは、当たり前のことでした。 本書での発達心理学では、進化心理学が説明していない、ヒトが成長していく過程そのものが進化の淘汰圧を受けていること、またその成長過程によって子孫を残せるかどうかに影響し、それが進化に影響を及ぼすということを説明しています。 従って、ヒトの進化という観点において、またその結果としてのヒトの本性とは何か、という観点において、進化心理学と発達心理学は互いを補完し合っていることになります。 また、進化発達心理学の観点からは、ヒトの性格や能力について個性が生まれ多様化し、その生まれ持った個性が環境を選び、個性と環境が相互作用することで、より個性化していくことは当然のことになります。 従って、この観点からはマット・リドレーが提唱している「生まれは育ちを通じて」は肯定されますので、「生まれか」「育ちか」という両極の理論は却下されます(但し「生まれ」論者の中で環境の影響を否定している人はおらず、むしろ「育ち」論者の中に進化や遺伝子の影響を否定している人が多いようです)。 更に、進化発達心理学の観点からは、人の知能はある時期における環境への適応によって、幾つもの知能がそれぞれ淘汰圧により生き残り現在に至っているのも当然のことになります(領域固有の知能)。 従って、この観点からはヒトの知能は複数であり、ハワード・ガードナーが提唱している「多重知能」は(知能として特定されたものや、その数についての議論はともかく)肯定されます。 これによって、知能は一つしかないという理論(これであらゆる思考が可能であるとされている知能、領域一般の知能)そのものは否定されますが、領域一般の知能そのものは、領域固有の知能とは別建てで一つの進化の産物として存在することは肯定されています。 なお、惜しいのは、脳科学や神経科学の知見があまり盛り込まれていないことです(多少は出てきますが)。 アントニオ・ダマシオやジョセフ・ルドゥーといった、脳科学・神経科学の最新の知見を最大限に盛り込むと、進化発達心理学は更に充実したものになると思います。
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