物語のテイストはこれまで林譲治が書いてきた宇宙もののSFとあまり違いはないのだが、日本が州制になっていたり、個人にIDタグがついていたり、ちょっと先にありそうな未来をさり気なく演出している様は良い感じ。
他の林譲治の他の小説にも言えるのだけど、訓練や危機管理を行う立場でない登場人物までもが危機に際して冷静で的確に処理をしてしまい決してパニックになどならないし、焦ったりもしない。これまでは宇宙という空間の中で宇宙飛行士などの訓練された人たちを扱ってきたので、そういう設定もあながち不自然ではなかったのだが、今回は近未来だし閉鎖された社会でも訓練された人間でもないので、全くもって不自然きわまりなく、ものすごく違和感がある。
特に女性キャラはそこに指導力まで加わっていて、もはや、人間としてパーフェクトの存在である。そういう存在が少数いる分にはかまわないのだが、出てくる女性キャラが皆そうだと、そんなできた人間ばかりのはずはないだろーと思ってしまう。
作者はそのようなパーフェクトな女性キャラにラフな言葉使いをさせたりして一生懸命読者に読者に近親感をだそうと努力してはいるが、そうすればするほど、どんどん読者からかけ離れた出来た人間だけがいる世界になっていっているようだ。なんか、普通の人間が住むには住みにくい世界、まさにユーレカが目指す世界のよう。
ともかく、もっと登場人物にメリハリをつけて描いてほしい。でないと、物語全体がシラケてしまう。