長谷川夫妻による進化生物学あるいは進化心理学についての、非常にわかりやすい教科書。
教科書として完璧。だけど、僕はこの本を人に薦めるかわりに、長谷川眞理子先生の『進化とはなんだろうか』『オスとメス=性の不思議』の新書2冊を買うことを薦めるでしょう。何故なら、内容はほとんど同じだと感じたし、新書を2冊買った方が安いから。
こう書くと次のような反論があると思います。本書の「売り」は、タイトルにあるように、進化生物学の視点で人間行動を見てみようというところにある。新書2冊では、そのような試みを正面からは取り上げていないだろうと。それはそうなのですが、僕自身最も楽しみにしていたヒトについて語った部分に満足できなかったので、進化生物学の教科書としてなら上述の2冊の新書を買う方を薦める、というわけです。
ここでは「社会」については何も語られていません(ヒトに限らず、同種同性の2個体による相互作用についてほとんど語られていないように感じた)。いや社会についても当然触れられているのだけど、それまでの自然科学的な話し方から急に社会科学的な話し方にかわってしまうように感じる。期待しているのは、自然科学的な話し方で、ヒトやその社会について語ってもらうことなのに(まぁ、それは社会についてのまともな科学がないという、どちらかと言えば社会科学側の責任なのかもしれませんが)。
ただ、この辺のことは僕のないものねだりなのかもしれません。全然褒めてないように見えるかもしれませんが、「教科書として完璧」というのは本心です。