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というのも、科学者には、「専門家」に対しては「専門用語」を駆使して自身の研究内容を語れる人はいるのですが、「非専門家(一般人)」に対して、それを出来る人は数少ないからです。
本書の中でもそれは実践されています。
聞き手はニューヨーク在住の高校生。高校生を相手に『Nature』(世界で最も権威のある科学雑誌)の論文を、平易な言葉で紹介しています。私が、自身の分野の論文を、高校生にも分かるように同じように説明できるか?う~ん、できるかなあ、と考え込んでしまいます。『Nature』という雑誌の性格上、『分かりやすさ』と『インパクトの大きさ』が高く評価されるとは言え、凄いですね。
また、双方的な授業がなされていることに好感が持てます。回答者(つまり高校生)が「間違った」答えをしても、それを「面白い意見だ」「そうゆう考え方もあるよね」と認めつつ、「でもこうは考えられない?」と持っていく流れが秀逸です。
本書の中で、『脳の地図は脳が決めているのではなくて身体が決めている』という言葉が印象的です。
著者のホームページも面白いですよ。
この本が成功しているのは、講義形式をとったこと。通常の入門書は、筆者自身が基本的なことを説明しているつもりでも、説明の仕方が悪かったり、専門用語が単調に並びがちだったりして余り面白くなく、また頭に残らないことが多い。でも、この本は少人数の生徒を相手にした講義をベースにしていて、読者もそこに加わって、一緒に考えているような臨場感がある。筆者の説明も、生徒達の反応をきちんと踏まえながら、わかりやすい事例を多く挟んでいるため、脳科学の基本的なエッセンスが頭に入ってくる。
僕が一番面白かったのは、人間の行動の多くは考えられているほど意識的(自由意志)に行われているわけでないというところ。悲しいとか嬉しいといった感情も、基本的には外部刺激に対する脳の反射的な作用だし、人間の自由意志を象徴する言語も、その多くは無意識な反応によっている。人間は他の動物と違い、言語を持ち自らの意志で世界を解釈し、働きかけられる、というのが一般的な通念だと思うけれど、実際はそれ程でもないということだ。面白いのは、この点に気持ち悪さを感じているのも、やはり脳の働きによる点だ。脳が、自らの働きに対して違和感を感じる。このあたりの議論はこの本ではそれ程触れられていないけれど、僕にとっては興味深いテーマだった。
このような「意識とは何か」といったやや哲学的な議論もあるし、脳の機構についての説明も勿論きちんとなされており、脳科学が現在課題としていることを一通り概観するにはもってこいの本だと思う。平易な語り口ながら、触れられている事項も多く、繰り返し読むことで理解も深まる。4章立てになっていて、それぞれの章にきちんとテーマ設定されているところも良い。お勧め。
欲しかったのは、読書ガイド。脳科学の基本が網羅されているのだから、そこから発展的に学びたい人の為に、紹介文付きのリストなどがあれば最高だった。
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